複式簿記とはPLやBSを作るためにある!初心者にもわかりやすく解説

複式簿記とは何なのか?
単式簿記(簡易式簿記)と複式簿記はどう違うのか?
そもそも簿記とは何なのか?
簿記と会計はどう違うのか?
複式簿記のメリットやデメリットは?
といったことが明確にわかり「頭がすっきり」します。
簿記初心者の方、上記の質問に明確に答えられない方、必見です!
そもそも簿記とは「お金や物の出入り」を「帳簿に記録」すること
簿記とは読んで字のごとく「帳簿に記入する」という意味です。
そして簿記では、お金やお金に換算できるモノの増減(以下「取引」として説明)を記録していきます。
よって、以下のようなことも簿記での取引対象となり、記録する必要があります。
- 簿記での取引対象になるもの
- 商品を破損した
- 商品が盗まれた
- 商品を社員が消費した
- 売上金額の一部が盗まれた
また、とりあえず取引を帳簿に記入すればいい訳ではなく、簿記には一定のルールがあります。
これは誰が見ても儲けの状態などを分かる必要があるからです。
私一人でしか商売をしていなくても、ルールに従う必要があるのですか?
従う必要があります。
ルールに従わないと「適正な納税」や「借入」などが出来ません。
また、一定のルールで記録することで
- 前月との比較
- 前年同月との比較
- 同業他社との比較
といったことが可能となります。
⇧目次に戻る【会計=簿記】ではない
会社経営には「会計力が必要」ということをよく聞くのですが、会計と簿記は違うものなのですか?
違うというよりは「会計の中に簿記が含まれる」といった関係です。
「会計≒簿記」というイメージの方もいらっしゃるかと思います。
しかし、正確には「簿記⊂会計」となります。

会計の大まかな流れ
会計の流れをざっくり説明すると、以下のような流れとなります。
- 会計の流れ
- 取引発生(モノが売れた・商品を仕入れた)
- 取引の分析(いくらで売れた・いくらで買った)
- 帳簿に取引を記録
- 記録を集計して報告書(BSやPL)の作成
- 報告書の分析(投資家や出資者など情報を必要とする方)
このうち簿記に該当するものは➁~➃になります。

簿記は取引を二面的に扱う
お金やお金に換算できるモノの増減、いわゆる取引には必ず原因があります。
- モノが突然消滅した
- お金が空気中から発生した
こういったことはあり得ません。
- モノが誰かに盗まれて無くなった
- モノが売れてお金が手に入った
といったように必ず取引には原因があります。
原因と結果といった「二面性がある」ということです。
そして簿記では、取引を二面的にとらえ帳簿に記録します。
原因 | 結果 |
---|---|
商品が売れた | 現金が増えた |
銀行からお金を借りた | 現金が増えた |
商品を仕入れた | 現金が減った |
備品を購入した | 現金が減った |
取引には原因と結果がある |
簿記には「単式簿記」と「複式簿記」の2種類ある
単式簿記は「お金の増減」と「原因」を記録します。
ちなみに単式簿記は簡易簿記と表現されたりもします。
具体例として以下のようなケースでの単式簿記と複式簿記の記載例を紹介します。
具体例
- 商品が売れ5万円の現金を手にした
- 電卓を購入し3千円を現金で支払った
- 交通費1千円を現金で支払った
日付 | 摘要 | 収入 | 支出 | 残高 |
---|---|---|---|---|
4/1 | 商品を売上 | 50,000 | 50,000 | |
4/3 | 電卓を購入 | 3,000 | 47,000 | |
4/6 | 交通費 | 1,000 | 46,000 | |
単式簿記はお金の増減だけを記録する |
日付 | 借方 | 貸方 | 摘要 |
---|---|---|---|
4/1 | 現金 50,000 | 売上 50,000 | |
4/3 | 消耗品費 3,000 | 現金 3,000 | 電卓の購入 |
4/6 | 交通費 1,000 | 現金 1,000 | |
複式簿記では取引を二面的に記録する |
名前からもわかるように単式簿記は記載する項目数が1つ、複式簿記は2つと違いがあります。
そして単式簿記は「お金の増減に関する原因」を記帳し、複式簿記は「取引の結果」と「原因」を記帳します。
ほとんど同じに見えるのは目の錯覚でしょうか?
分ける必要あります?
では、商品が売れたけれどもクレジットカード払いで、まだ現金を手にしていない場合はどうでしょうか?
単式簿記の記載例と同じでは?
単式簿記は「お金の増減」と「原因」を記載します。
言い換えれば「現金で支払う・受け取る」ということが必要です。
よって、単式簿記ではクレジットカード払いなどは記帳できません。
ちなみに複式簿記では売掛金という勘定科目で記帳できます。
日付 | 摘要 | 収入 | 支出 | 残高 |
---|---|---|---|---|
4/1 | クレジットカード売上 | 表現できない | ||
単式簿記ではクレジットカードの取引を記帳できない |
日付 | 借方 | 貸方 | 摘要 |
---|---|---|---|
4/1 | 売掛金 50,000 | 売上 50,000 | クレジットカード売上 |
売掛金とは掛け取引で使わる勘定科目 |
単式簿記と複式簿記の違いは記帳方法だけでなく扱う帳簿の数も異なる
単式簿記と複式簿記では扱う帳簿の数も異なってきます。
単式簿記の場合は、一冊のノートなどで事足りるケースもあります。
その一方で複式簿記の場合は
- 仕訳帳
- 元帳
という2つの帳簿が必要です。
仕訳帳とは日付順で取引がわかるものです。
元帳とは取引ごとにまとめられたものです。
そして一般的に簿記といえば複式簿記を指し「単式簿記≒家計簿」と言えます。
⇧目次に戻る複式簿記には2つのメリットがある
- 複式簿記の2つのメリット
- PLやBSを作成でき、正確な儲けや財政状態を把握できる
- 青色申告でき節税効果がある
メリット➀_PLやBSを作成でき、正確な儲けや財政状態を把握できる
複式簿記では取引を以下の5つのグループに分け、PLやBSを作成します。
グループ名 | 特徴 |
---|---|
資産 | 現金や土地といった資産価値のあるもの |
負債 | 借金や未払金といった債務 |
純資産 | 資産から負債を引いた純資産 |
費用 | 事業活動にかかわる必要経費 |
収益 | 事業活動などから得た収入 |
そしてグループには、それぞれ勘定科目というものがあります。
あるいは勘定科目を設定します。
グループ名 | 勘定科目 |
---|---|
資産 | 現金、普通預金、売掛金、立替金 |
負債 | 借入金、未払金、未払費用、買掛金 |
純資産 | 資本金、資本準備金、利益剰余金 |
費用 | 仕入、給与、交通費、交際費、地代家賃 |
収益 | 売上、受取利息、受取配当金、雑収入 |
あくまでも一例です。他にも勘定科目は多数あります。 |
その勘定科目や金額などを記録していきます。
(勘定科目についての詳しい内容は、勘定科目一覧(資産、負債、純資産、収益、費用ごと)に記載しています。)
一般的には「仕訳を起こす」といいます。
そして仕訳を集計することにより、PLやBSが完成します。
ちなみにPLやBSは決算書ともいい、複式簿記とは決算書を作るためにあると言えます。
単式簿記では決算書を作ることはできません。
これは
- 粗利は?
- 借金の残高は?
- いくら儲けた?
- 普通預金の残高は?
- 所有する建物の価値は?
といったことが単式簿記では分からないが、複式簿記では分かるということです。
ちょっと待ってください!
そもそもPLやBSってなんですか?
PLとは損益計算書(そんえきけいさんしょ)のことで「1年間の儲けを示す表」です。
英語でProfit and Loss Statement(プロフィット アンド ロス ステイトメント)と呼ばれ、略してPLと言います。
PLは費用と収益の2つのグループから構成され、正確な儲け(あるいは損失)を把握することが出来ます。

また、BSとは貸借対照表(たいしゃくたいしょうひょう)のことで「1年の最後の日の財産や借金の状況を示す表」です。
英語でBalance Sheet(バランスシート)と呼ばれ、略してBSと言います。
貸借対照表は資産・負債・資本の3つのグループから構成され、財産や借金の状況を把握することが出来ます。

このようにPLやBSを作成することにより、家計簿では不可能な経営成績や経営状況を把握することが可能となります。
また、仕訳を起こすとは、すべての取引を借方(かりかた)と貸方(かしかた)に分けて記帳していくことです。
なんだか難しく感じるかもしれませんが
- 借方は左側
- 貸方は右側
という覚え方で十分です。
借方(左側)にAという勘定科目とその金額、貸方(右側)にBという勘定科目とその金額を記帳します。
ちなみに借方と貸方の合計金額は必ず一致します。
一致しない場合は仕訳に間違いがあるということです。
日付 | 借方 | 貸方 | 摘要 |
---|---|---|---|
8/2 | 仕入 200,000 | 買掛金 200,000 | 掛けでの商品仕入 |
8/4 | 普通預金 1,000,000 | 借入金 1,000,000 | 信用金庫より借入 |
8/5 | 給与 300,000 | 普通預金 300,000 | 給与の支払い |
借方と貸方の金額は必ず一致する |
そして借方・貸方にはどういったものを記帳するのかは以下ようなルールがあります。
- 資産・費用は借方
- 負債・純資産・収益は貸方
表にすると以下のようになります。
借方 | 貸方 |
---|---|
資産の増加 費用の発生 | 負債・純資産の増加 収益の発生 |
借方 | 貸方 |
---|---|
負債・純資産の減少 収益の消滅 | 資産の減少 費用の消滅 |
そして、その記帳した取引を1年単位で集計しPLやBSを作成します。
ちなみにこの1年を会計期間といいます。
個人事業主の場合は1月1日~12月31日と決まっており、法人の場合は任意で期間(4月1日~3月31日など)を決められます。
また、法人の会計期間は1年未満でも可能です。(ただし、1年を超えることはできません。)
⇧目次に戻るメリット➁_青色申告でき節税効果がある
複式簿記で記帳をすると「青色申告」という形で申告できます。(ちなみに青色申告でない場合は白色申告となります。)
青色申告のメリットとしては以下のようなものがあります。
- 青色申告のメリット
- 最大で65万円の特別控除を受けられる
- 税金がその分安くなります。
- 3年間の赤字を繰越しできる
- たとえば1年目が赤字100万円、2年目が赤字50万円、3年目が黒字200万円の場合、3年目の税金計算では50万円(200万-100万-50万)の黒字として計算できます。
- 30万円未満の償却資産の特例を受けられる
- 10万円以上のパソコンや車といった資産を購入した場合、購入したときに全額を一括で費用に計上できません。それが青色申告であれば、30万円未満のものは一括で費用に計上できます。
- 家族に給与を支払える
- 「青色事業専従者給与に関する届出書」を税務署に提出することにより、家族への「適正な給与」を経費として計上することができます。
正確には単式簿記(簡易簿記)でも青色申告は可能です。
ただ、控除できる金額が変わります。
申告方法 | 控除金額 |
---|---|
青色申告(複式簿記) | 「65万円 or 55万円」(注1) |
青色申告(単式簿記) | 10万円 |
白色申告(単式簿記) | なし |
注1
「電子申告」または「電子帳簿保存」をすれば65万円の控除で、しないと55万円の控除となります。
青色申告(単式簿記)と白色申告(単式簿記)の記帳方法は違うのですか?
同じです。
正確には白色申告(単式簿記)では、取引を日々の合計金額だけ記帳することも認められています。
青色申告(単式簿記)の方は認められておらず、取引を一つずつ記帳する必要があります。
複式簿記にはデメリットもある
複式簿記には2つのデメリットがあります。
- 複式簿記の2つのデメリット
- 専門知識が必要で難易度が高い
- 手間や時間がかかる(通常は費用もかかる)
複式簿記をするためには、
- 仕訳の知識
- 会計ソフトの知識
といった専門知識が必要です。
また、単純に複式簿記は単式簿記よりも入力項目が多いので、その分手間や時間がかかります。
そして今では会計ソフトを使い「仕訳を入力」するのが一般的です。
仕訳の知識が不足している場合には、税理士や会計事務所に経理を外注化するといったこともあります。
このように会計ソフトの費用や税理士への費用といったことが発生してきます。
⇧目次に戻るまとめ、及びよくある質問
今回の記事では、
- 簿記とはそもそも何なのか?
- 簿記と会計の違い
- 複式簿記と単式簿記との違い
- 複式簿記のメリットやデメリット
について解説しました。
それぞれを簡単にまとめますと、以下のようになります。
- まとめ
- 簿記とはそもそも何なのか?
- 「お金や物の出入り」を「帳簿に記録」すること
- 簿記と会計の違い
- 「簿記⊂会計」の関係にある
- 複式簿記と単式簿記との違い
- 複式簿記は「取引の結果」と「原因」を記帳する
- 単式簿記は「お金の増減に関する原因」を記帳する
- 複式簿記は仕訳帳・元帳という2つの帳簿が必要
- 単式簿記は一冊のノートなどで事足りるケースもある
- 複式簿記のメリット
- PLやBSを作成でき、正確な儲けや財政状態を把握できる
- 青色申告でき節税効果がある
- 複式簿記のデメリット
- 専門知識が必要で難易度が高い
- 手間や時間がかかる(通常は費用もかかる)
また「よくある質問とその回答」は以下のようになります。
- よくある質問とその回答
- 自営業に複式簿記は必要ですか?
- 青色申告で節税メリットを受けたいのであれば必要です。
また、正確な儲けや財政状態を把握して、しっかりとした経営をしたいなら複式簿記は必須です。
ご参考になぜ、ヴェニスの商人には、複式簿記が必須だったのか?
をご紹介します。(DIAMOND online様より引用) - 複式簿記と単式簿記の違いを簡単に教えてください
- 単式簿記は「お金の増減に関する原因」を記帳し、複式簿記は「取引の結果」と「原因」を記帳します。
単式簿記の記帳項目は1つ、複式簿記は2つと覚えると良いでしょう。
最後まで閲覧して頂きありがとうございます。
- この記事を書いた人
- 都心綜合会計事務所
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