福利厚生費とは?該当するものや条件を具体例で解説
福利厚生費とは、簡単に言えば、従業員の「働く環境や状況」を良くするための費用です。
福利厚生費でカバーできる範囲は広く、また、給与や接待交際費との境界が難しい勘定科目でもあります。
この記事では福利厚生費に該当するものや、該当するための条件などを、具体例を多数用いてご紹介しています。
福利厚生費に該当するものや条件
以下のようなものは福利厚生費に該当します。
ただし、下記のようなものでも、金額が世間一般の常識をはるかに超えていたり、一部の人のためだけであれば福利厚生費には該当しません。
ちなみに、この条件は福利厚生費の条件として、全てに共通して言えます。
- 福利厚生費に該当するもの
- 慶弔見舞金
- おめでたいことや悲しいことがあった時に、従業員や役員にお支払いするもの
具体的には- 香典
- 出産祝
- 結婚祝
- 誕生日祝
- 災害見舞
- 疾病見舞
- 死亡弔慰金
また、お祝いや見舞いの品物、式場の花の費用なども対象となります。注
世間一般の常識を超えるような祝い金や香典は、福利厚生費ではなく給与扱いになります。
また、規定の作成は義務(条件)ではありませんが、社会通念上相当と認められる金額や支給対象の条件(勤続〇〇年以上など)を明記した規定などを作成し、その規定に従って支給することをお勧めします。 - 制服代
- 以下の3つの条件をすべて満たす必要があります。
- 実物で支給、もしくは貸与
- 企業の制服と明確に判断できる
- 仕事中のみの利用であり、プライベートでは利用しない
- 健康診断の費用
- 以下の3つの条件をすべて満たす必要があります。
- 全ての役員や従業員が健康診断を受けられること
- 一部の人だけではなく、全員分会社が負担すること
- この健康診断が常識的に必要と思われること
- 通勤手当
- 通勤にかかる電車代やガソリン代などの全て、または一部を会社が負担するもので、一定の限度額内であるもの
ちなみに交通機関を利用されている方は、1か月15万円が限度額となります。
限度額についての詳しい内容は、国税庁HPの「通勤手当の非課税限度額の引上げについて」をご参照ください。
また、実際は旅費交通費で処理する場合がほとんどです。 - 慰安旅行の費用
- 以下の4つの条件をすべて満たす必要があります。
- 4泊5日以内であること
- 役員や従業員の参加者が50%以上であること
- 金額が常識的な範囲内であること
- 役員や従業員の食事補助
- 以下の2つの条件をすべて満たす必要があります。
- 役員や従業員が食事代の半分以上を負担していること
- 【食事の金額 – 役員や従業員が負担した金額】が1ヶ月で税抜き3,500円以下であること
- 残業食事代
- 勤務時間外の業務に対する食事代であり、金額が常識的な範囲内であること
- 保養施設の費用
- 保養施設とは企業が社員の研修や保養(心身を休ませて健康を保つこと)のために用意する施設のことをいいます。
そして、保養施設の費用を福利厚生費として計上するためには、以下の4つの条件を全て満たす必要があります。- 全員が利用できる
- 常識的な範囲であり過剰サービスでない
- 社内規定が作成されている
- 利用の記録をつけている
- 社宅
- 下記の「社宅を福利厚生費として計上できる条件や具体例」をご参照ください。
- その他
- 以下のようなものも福利厚生費に該当してきます。
- 常備薬
- 資格取得費用
- 運動会の費用
- 育児や介護の支援費用
- 新年会や忘年会の費用
- インフルエンザ予防接種
- 社内のお茶やコーヒー代
- スポーツクラブの費用(法人契約)
社宅を福利厚生費として計上できる条件や具体例
社宅を福利厚生費として計上って、どういうことですか?
ここはかなりややこしいので、順を追って説明致します。
- 社宅を福利厚生費として計上する流れ(金額はたとえ)
- 会社契約で物件を借りる
- 会社が20万円の家賃を支払う
- その物件を従業員に貸す
- 物件を貸した従業員から8万円家賃として受け取る
- 会社が支払った20万円と、従業員から受け取った8万円の差額12万円を福利厚生費として計上する
そういうことでしたか。
そこまでややこしくはありませんね。
いや、まだ続きがあります。
上記では、従業員から8万円の家賃を受け取っている例でご紹介していますが、これが1万円だったら、どうでしょうか?
その従業員は1万円で20万円の家賃のところに住めることになります。
普通の会社員であれば、給与から税金を差し引かれ、そこから家賃を支払っています。
なので、このような常識の範囲を超えている(1万円の負担で20万円のところに住める)場合には、一定の金額は従業員への給与として扱われます。
常識の範囲を超えていると言われても・・
だったら1万円ではなく3万円にしたらどうなるのですか?
というか、1万円をいくらにすれば給与扱いにならないのですか?
そもそも一定の金額っていくらですか?
この金額の部分には明確な基準があります。
賃貸料相当額の50%以上を従業員から受け取っていれば、給与扱いではなく、福利厚生費として計上できます。
また、一定の金額とは「賃貸料相当額 - 従業員から受け取る家賃の金額」です。
賃貸料相当額は、以下の計算式で算出します。
賃貸料相当額とは、次の(1)から(3)の合計額をいいます。
(1)(その年度の建物の固定資産税の課税標準額)×0.2パーセント
(2)12円×(その建物の総床面積(平方メートル)/3.3(平方メートル))
(3)(その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)×0.22パーセント
そして、賃料相当額の50%以上を従業員から受け取っている場合には、給与扱いとはなりません。
まとめますと、以下のようになります。
①・・従業員から受け取る家賃の金額
②・・従業員への給与となる金額
③・・福利厚生費として計上できる金額
状況 | ① | ② | ③ |
---|---|---|---|
従業員にタダで貸している | 0円 | 14万円 | 6万円 |
賃貸料相当額の50%未満で貸している | 6万円 | 8万円 | 6万円 |
賃貸料相当額の50%以上で貸している | 7万円 | 0円 | 13万円 |
福利厚生費なのか判断に迷うケース
福利厚生費なのか?接待交際費なのか?あるいは給与なのか?判断に迷うケースは多々あります。
今回はその中でも、メジャーのものをピックアップして、ご紹介しています。
⇧目次に戻る2次会の費用
忘年会は全社員参加したのですが、その後の2次会は一部の人だけが参加しました。
この2次会の費用は、福利厚生費に該当しますか?
いや、一部の人だけが参加した2次会の費用は、接待交際費になります。
もしも、2次会も全員参加していれば、福利厚生費となります。
サークル活動の補助金
会社でサッカーのサークル活動を考えています。
この場合の費用は、福利厚生費で問題ないですか?
条件しだいで、変わってきます。
- サークル活動の補助金が福利厚生費と認められる条件
- 誰でも参加資格がある
- 参加者に直接、お金を配分していない
- 補助金がサークル活動の目的に沿っており、常識の範囲内の金額である
逆に言えば、一部の人だけが参加できるゴルフサークル等で、多額のお金を参加者に直接渡しているといった場合には、福利厚生費ではなく、給与扱いとなります。
⇧目次に戻る取引先も含めた社員旅行
社員全員が参加する社員旅行に、取引先も招きました。
この場合はどうなるのでしょうか?
社員分の費用は福利厚生費、取引先分の費用は接待交際費になります。
借方 | 貸方 | 摘要 |
---|---|---|
福利厚生費 80万円 接待交際費 20万円 | 普通預金 100万円 | 旅行費用の振込み |
最後まで閲覧して頂きありがとうございます。
- この記事を書いた人
- 都心綜合会計事務所
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